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ほとんどミステリー小説みたいな面白さ

隠された十字架―法隆寺論 (新潮文庫)
1972年に書かれた法隆寺論です。中盤の多くのページを「謎の解決への手がかり」として割いて、藤原氏がいかに勢力を伸ばしていったかという事、そしてその礎となり権力抗争に敗れ去った人たち。有名な古典を始め、現存する資料や寺社仏閣、仏像、建築その他様々な事物から非常に緻密になされます。この考証が甘いとトンデモ本の類に転がりかねないので微妙なバランスで踏みとどまっています。古代の権力抗争、政治の裏側みたいな物はいつの時代でも人々の興味の的ですから本書の面白さの基になっている。ただ、思わず全面的に信用しそうになりますが、これはこう思う、いやそうに違いない、と言った感じの論調も多く、始めに結果ありき、いやここでは梅原氏の信念ありきで、悪く言うとどうとでも解釈出来る事を無理矢理に都合よくこじつけているとも取れる。これは程度の問題もあり、全てが全てそうだとも言い切れないので読者の裁量次第ですね。ただ作者本人も書いている様に細かな間違いは将来見つけられるかもしれないが、その様な重箱の隅を突く様な批難では無く、全体的に見ろと言う意味の事を言っている。これには確かに賛成出来る。そして古代の物事を現代人の常識で見るから誤解が生まれると言う様な事も再三言っていたと思うが、確かにそれに即して素晴らしい視点で論が展開されている部分もあれば、そう言う作者自身が気付かずに自分の常識、現代の常識を前面に出してしまっている部分もある。まあ難しい問題ですね、これは。最後にこの「隠された十字架」というタイトルは意味深というか、これに関しては直接本書では触れられていないのです。作者も最後にこの謎を暗示するかの様な事も書いているが、この時点ではまだ裏付ける資料の研究が全然、進んでいなかったのでしょうね。とりあえず法隆寺からという感じで、おそらく本書は作者が本当に探求したかった大きな謎のほんの表に出た一部分だけに留まっている。ぞの全貌の研究は多分35年経った今もなされていない。その謎とは、景教(原始キリスト教)がいつ日本に入ってきて、どれくらい影響を及ぼしたか?またどの様に消えて言ったか?聖徳太子を含む蘇我氏がどの様に関わるのか?という様な事ですね。前述した様に本書ではそれらに付いて全く触れられていません。
引用元:ほとんどミステリー小説みたいな面白さ

ピンクラテ

隠された十字架―法隆寺論 (新潮文庫)
史実を大胆にアレンジした歴史モノだとか、聖徳太子が実は〇〇だったとか・・・・そんな事正直どうでもいいんです。ただ、厩戸王子って本当は居なかったんじゃないかとか、不思議な力を持っていなければ説明しようがない変テコな伝説があるとか、そういう疑問だけでここまで想像力を張り巡らせて巧みな人物造形をする山岸先生の神業にはうなるばかりですが。本当、神がかり漫画です。
まず絵がすばらしいですね。
一つ一つの細やかな描線が王子の様々な表情を多彩に魅せ、吹き出しやコマ割りまでにもこだわり、登場人物の些細な仕草すべてが完璧なまでの様式美を保っています。少女漫画の世界でこれ程身の毛がよだつ美しさを描ける人はなかなかいないと思います。山岸の独特な世界は《様式》《空気》《間》そういった、普通の漫画家がおざなりにしてしまう事にこだわってこそ到達できるのです。そしてその到達点の極みがこの作品。
天才で傲慢で冷静な超人が、愛を知ることにより普通の人間と同じく悶え苦しむ。その孤独、寂寥感、嫉妬心、情愛のすべてが素晴らしい絵と繊細な心理描写の数々によって浮き彫りにされ、偉人が私たち一般人にも共感できる一人の人としてよみがえってくる。
どんなに古い歴史であろうと、『歴史とは人が生きた道』。上辺だけの業績をなぞるのではなく、内面から生々しい人間性を描いてる。
私は正直よくある歴史モノが苦手で、業績ばかりなぞらえて大仰になったり、人物をやたら美化したりする話を読んでも、魅力を感じません。あと史実通りのものにも興味なし。古い過去を語るのにうわっつらの年表をただ模写するだけで『良い物語』になるわけがないのだから。私と同じ意見をお持ちの方は、きっと楽しめる筈です。
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